「せめて、共犯者でいよう」





わやQが邦楽を聴く 第1回


女王蜂 - 売春
作詞:薔薇園アヴ  作曲:薔薇園アヴ





女王蜂は、最も注目すべきバンドのひとつ。
でも、少し「狙い過ぎ」に感じ、以前はあまり惹き込まれませんでした。

そんな女王蜂が今年3月にリリースした4thアルバム『奇麗』。
そこに収録されていた『売春』というこの曲。
初めて耳にした時の衝撃は忘れられません。

イントロの時点で「これまでの女王蜂らしくない」と感じる。
そして、ヴォーカルのアヴちゃんが歌い出し……
気が付くと、この曲だけを何度も何度も繰り返し聴いていました。

アヴちゃんが、女役と男役の二役を一人で歌う。
クセになるメロディーに、鮮烈で美しい歌詞が乗る。
聴き返す度に、「何か」で胸がいっぱいになる。


これは、彼女(彼?)でしか表現できない曲だ。
マイノリティーであり、アンビバレンスな彼女だからこそ伝わる。




「売春」という強烈な言葉。
この言葉が表すものを、これまで深く考えたことがない。
「売春」は「売春」でしかなかった。

身体を売ること。
それを買うこと。
少なくとも、今の日本では決して許されないこと。
そんな説明的な「当たり前の言葉」しか浮かばない。

そういう不明な自分を、この曲の歌詞は責め立てる。



この作品には物語がある。
物語が見える。

若い女と妻帯者。
二人にあるのは、肉体関係。
そして、金銭関係。

最初は「割り切った関係」だった。
しかし、「関係」を繰り返す内に「情」が生まれる。
その「情」が、二人を「割り切れない関係」に変えてしまった。

「売春」から始まってしまったこの関係は、歪だ。
だから、この二人は苦しむことになる。

恋人にはなれない。
友人にもなれない。
どんなに「関係」が深まろうとも、二人の先に未来はない。

お互いの身体と身体の間に、「金銭」を置いてしまった二人。
その事実は、まるで透明なガラス板のように二人を隔ててしまう。
どんなにお互いを深く識ろうと、想おうと、二人は決して交われない……。



この曲では、そこが本当に丁寧に、そして上手く表現されている。


「あたしが売る春 僕が奪う春」

「あなたが被害者 君は支配者に」

「せめて 後ろめたさだけは残さないでおこう」

「せめて 傍観者にだけは なりたくない なれないね」


すれ違っているわけではない。
でも、「売春」は決して「対等の関係」ではありえない。
 
対等の関係ではない二人。
だけど、お互いに深い情が生まれている。
そして、それは決して報われないことを分かっている。
決して交わらないことを知っている。


そんな二人が出す結論、それは……






「せめて 共犯者でいよう」






身体に電流が走るような言葉でした。
「売春」とは「共犯」。

この二人が唯一交われる「点」。
それは「罪」。
一緒に罪を犯し、互いの罪を知ることだけ。


ガラスを挟んで向かい合う男と女。
そのガラス越しに「罪」という手を重ねあう二人。
心に、そんな情景が浮かびます。


ただ美しいだけでも、ただ切ないだけでもない作品。
生涯、忘れられない一曲になるでしょう。




2015年10月20日 わやQ











女王蜂 - 売春



売春
Sony Music Labels Inc.
2015-03-25





収録アルバム
奇麗
女王蜂
SMAR
2015-03-25







別バージョン
『売旬 feat・篠崎愛 』
『売旬 feat・志磨遼平(ドレスコーズ)』を収録
失神(初回生産限定盤)
女王蜂
SMAR
2015-07-22