字幕づくり 第61回


今回は "Avicii - Broken Arrows" に挑戦。




新アルバム "Stories" から。

重めの歌詞を、軽快な音楽に乗せるのがニクい。
不思議と前向きになれますね。
MVもストーリー仕立てで、見応えがあります。









- Lyrics -


You stripped your love down to the wire
Fire shy and cold alone outside
You stripped it right down to the wire
But I see you behind those tired eyes

Now as you wade through the shadows that live in your heart
You'll find the light that leads home (home, home)
Cause I see you for you and your beautiful scars
So take my hand, don't let go

Cause it's not too late, it's not too late
I, I see the hope in your heart
And sometimes you lose and sometimes you're shooting
Broken arrows in the dark
But I, I see the hope in your heart

I've seen the darkness in the light
The kind of blue that leaves you lost and blind
The only thing that's black and white
Is that you don't have to walk alone this time

We have to tear down the walls that live in your heart
To find someone you call home (home, home)
Now you see me for me and my beautiful scars
So take my hand, don't let go

Cause it's not too late, it's not too late
I, I see the hope in your heart
And sometimes you lose and sometimes you're shooting
Broken arrows in the dark
But I, I see the hope in your heart

It's not too late, it's not too late
I see the hope in your heart
Sometimes you're losing, sometimes shooting
Broken arrows in the dark








※今回のポイント※

ちょっと難産でした。

彼の作る歌詞は、少し哲学的な雰囲気があります。
言い回しも独特のものがあり、「ノリ」では上手く訳せません。
曲調とは裏腹ですね。

どんな意味が込められているか考え、
それらを取りこぼさないように訳し、
さらに、字幕用に言葉を削っていく。
テンポの速い箇所に言葉が詰まっていると、本当に厳しい。

実は今回、前日にはあらかた出来ていました。
でも、どうにも様にならず、一晩「寝かせ」たんです。
それで、ようやく「ギリギリOKかな?」というレベルに。

お蔵入りせずに済んで良かった。








You stripped your love down to the wire
Fire shy and cold alone outside
You stripped it right down to the wire
But I see you behind those tired eyes


"down to the wire"
「最後の最後まで」とか「期限が近づいて」とか。
もともと競馬からきたフレーズみたい。
「ゴールのテープを切る(まで)」ってイメージかな?

"Fire shy and cold alone outside"
ちょっと不思議な言い回し。
どう訳していいか悩んじゃいますよね。
特に最初の "Fire shy" が普通じゃないので困ります。
「火」が「臆病」「消えかかってる」「足りない」
こんなイメージでしょうか?
でも、何となく言いたいことは分かる。
とにかく、「外」に「温もり」がないってこと。
多分。



" 君は "愛" を脱ぎ捨てた
 外は "冷たい孤独" だけなのに
 最後まで そうしていたね
 でも 倦んだ瞳の奥に 君がいる







Now as you wade through the shadows that live in your heart
You'll find the light that leads home (home, home)
Cause I see you for you and your beautiful scars
So take my hand, don't let go


"wade through"
「かき分けていく」「努力して進む」

"Cause I see you for you and your beautiful scars"
この "see" は「見る」ではなく、「会う」が自然だと思います。

"So take my hand, don't let go"
「だから、この手を取って、(そして)離さないで」
時間的余裕がないので、字幕では一文字でも減らしたい。
こういう時に、培ってきたテクニックを使います。



" いま君は 心に潜む "影" を切り抜け ―
 家路を照らす "光" を見つけるのさ
 俺が 会いに行くから ―
 君と "美しい傷跡" のため
 だから ―
 この手を しっかりと … "






Cause it's not too late, it's not too late
I, I see the hope in your heart
And sometimes you lose and sometimes you're shooting
Broken arrows in the dark
But I, I see the hope in your heart


"it's not too late, it's not too late"
ただの繰り返しだとつまりません。
「遅すぎはしない」「手遅れじゃない」
両方使っちゃいましょう。

"sometimes you lose and sometimes you're shooting
 Broken arrows in the dark"
今回のキモです。
簡単な単語しかないので、訳するのは簡単。
でも、全体のイメージを掴めていないと、ヘンテコな訳に。
注目すべきは, "lose" 「負ける」と、
"Broken arrows" 「折れた矢」です。



" 遅すぎはしない ―
 手遅れじゃない
 君の心に "希望" が見えるから
 君は 時に敗れ ―
 闇の中 放ち続ける ―
 "折れた矢" を
 でも ―
 君の中 "希望" が見える "



人間は、時に様々なものに「負ける」ことがあります。
環境、時世、他人、時には自分。
追い込まれても、なんとか踏みとどまり、奮闘している。
でも、折れた矢を闇雲に放っても、事態は好転しないんです。
それでも、まだ可能性は残っている。
そんなイメージですね。







I've seen the darkness in the light
The kind of blue that leaves you lost and blind
The only thing that's black and white
Is that you don't have to walk alone this time


"The only thing that's black and white"
「白黒ついてる、ただ一つのこと」
=「ただ(ひとつ)ハッキリしていること」

"you don't have to walk alone this time"
「今度は、君は一人で歩いちゃいけない」
ここは、「君を一人にしちゃダメ」と意訳。



" 光の中に "闇" を見ていた
 君を "見失わせてる" 憂鬱なんかを
 ただ ハッキリしてるのは ―
 君を 一人にしちゃダメってことさ

 俺たち "心の壁" を壊さなきゃ
 "帰るべき相手" を探すため
 いま君は 出会う ―
 俺と "美しい傷跡" のため
 だから ―
 この手を しっかりと … "







Cause it's not too late, it's not too late
I, I see the hope in your heart
And sometimes you lose and sometimes you're shooting
Broken arrows in the dark
But I, I see the hope in your heart

It's not too late, it's not too late
I see the hope in your heart
Sometimes you're losing, sometimes shooting
Broken arrows in the dark


今回のフィニッシュは、こんな感じ。



" 遅すぎはしない ―
 手遅れじゃない
 君の心に "希望" が見えるから
 君は 時に敗れ ―
 闇の中 放ち続ける ―
 "折れた矢" を
 でも ―
 君の中 "希望" が見える

 そうさ 手遅れなんかじゃない
 君の中には "希望" がある
 時には 敗れ
 "折れた矢" を ―
 放つことも あるけれど … "












この曲は、色々と考えられますね。

大まかな解釈としては、
「絶望に捕らわれた女性を、なんとか救おうとしている」
というものでしょう。

曲の中で、「美しい傷跡」とい言葉が、二度出て来ます。
"your beautiful scars" と "my beautiful scars" です。
前者は、「リストカット」や「ためらい傷」を想像できます。
後者は、彼女を救うため身体を張り、その際に出来たものかも。
もしかしたら「美しい傷跡」は、二人の戦いの象徴かもしれません。


そもそも、男性が歌っているから「男女」と感じただけで、
家族、友人、同性の恋人……、色んな可能性がありますね。
つまり、全ての人に向けた歌ということ。

人生は、思い通りになることばかりではない。
もがき苦しみ、頑張っても報われない場合もある。
でも、周りにちゃんと目をやれば、必ず支えてくれる人がいる。
だから、どんなに絶望的な瞬間も、胸に希望を抱け。
そうすれば、道は開けるんだ。

そういう、前向きなメッセージと捉えています。





いやぁ、字幕って本っ当に難しいもんですね。
ではまたお会いしましょう。






↓ 今回の曲はコチラ ↓
 


Avicii - Broken Arrows



ストーリーズ
アヴィーチー
ユニバーサル ミュージック
2015-10-02