「いつだって可愛いコが、人気投票1位になる」




わやQが邦楽を聴く 第2回


AKB48 - 恋するフォーチュンクッキー
作詞:秋元康  作曲:伊藤心太郎






「この曲を聴くと涙が出る」
こう言うと、大抵怪訝な顔をされる。

確かに、「誰もが踊れる曲」として大ヒットした。
この曲を踊り、YouTubeに投稿するブームも、大きな話題となった。
2013年の忘年会の余興で、この曲が使われなかったことは皆無だろう。
今では、カラオケでも「アゲ↑↑ナンバー」として定着した。
だから、「パーティーチューン」として認識されているのも仕方がない。

でもね、この曲をそういう「特別なもの」にしたのは、
決して音楽とダンスのためだけではないと思うんですよ。
むしろ、歌詞の素晴らしさの占める割合が大きいと感じるんです。



最初に言っておきます。
わやQは、作詞家・秋元康を尊敬しています。
これも、大抵怪訝な顔をされた後、
「ああ、『川の流れのように』ね」と、勝手に納得されてしまいます。

確かに、名曲中の名曲。
素晴らしい仕事だと思います。
ただ、わやQが強く魅力を感じるのは、
むしろ「恋するフォーチュンクッキー」のような歌詞なんです。




あなたのことが好きなのに
私にまるで興味ない
何度目かの失恋の準備



特にこの何度目かの失恋の準備なんてグッときます。
「失恋の準備」なんて言葉、一度も使ったことはないけれど、
諦めにも似たその気持ちが、心に迫ります。





まわりを見れば大勢の
可愛いコたちがいるんだもん
地味な花は気づいてくれない



特にスクールライフってそうですよね。
美人、かわいい、愛嬌がある。
イケメン、スポーツ万能、面白い。
すごく勉強ができるとか、バンドをやってるとか。
そういう「キャラ」や「ブランド」を持っていないクラスメイトは、
「その他大勢」であり、クラスに居ないのと一緒。
……と、本人は真剣に思い悩むんです。





性格いいコがいいなんて
男の子は言うけど
ルックスがアドヴァンテージ
いつだって可愛いコが
人気投票1位になる



ここで、いつも涙腺が決壊してしまいます。
年頃の少年少女にとって、恋愛は人生に等しい。
「普通の子」の心の叫びが聞こえてくるようです。



以前、彼が某TV番組で言っていた言葉が、強く印象に残っています。
「ツールが変わっただけで、人間の気持ちは今も昔も変わらない」

確かに、ラブレターや交換日記が使われなくなり、
その役割を「LINE」なんかが果たすようになりました。
でも、確かに恋する気持ちや人を想う心自体が、
変わってしまうことなんてないんですよね。

そういう気持ちは、きっと何十年何百年、
いえ、何千年何万年経っても、変わることがないんでしょう。
だからこそ、例えば今「万葉集」を読んでも感動できるんです。
ただ、歌を詠むのではなく、メッセを送ったり、
ツイートしたり、動画を投稿したりする違いだけ。


秋元康のすごい所は、50代も半ばを越え、お金も地位も得て、
それでもなお、少年のような感性を持ち続けていること。
彼の詩には、純朴な少年の横顔が見える瞬間があります。

例えば、先ほどの
「いつだって可愛いコが、人気投票1位になる」の続きの部分、



プリーズ プリーズ プリーズ オーベイビー
私も見て



この私も見てがいいですよね、ほんと。


また、難しい言葉を使わないという姿勢が好きです。
最近のアーティスト気取りは、わざと難解な言葉や、
難読漢字なんかを使い、悦に入っているように感じます。
でも、秋元康の作る歌詞は、非常に平易な言葉で紡がれます。
ストレートです。
「普通の子」の歌なんです。
だから、老若男女全ての人に伝わるんですよね。


もう一つ好きな所を挙げるとすれば、
基本的に「前向きでハッピーな気持ち」で終わること。
少し胸が痛くなっても、最後は温かい気持ちで終わる。
そこがまた感動的ですよね。
「こんな時代だからこそ、希望が必要だ」って信念を感じます。

この曲も、最後はとても前向きに、
「フォーチュン」を感じさせるフィニッシュになっています。



恋するフォーチュンクッキー!
未来は
そんな悪くないよ
Hey! Hey! Hey!
ツキを呼ぶには
笑顔を見せること
ハートのフォーチュンクッキー
運勢
今日よりもよくしよう
Hey! Hey! Hey!
Hey! Hey! Hey!
人生捨てたもんじゃないよね
あっと驚く奇跡が起きる
あなたとどこかで愛し合える予感



前向きだけど泣けます。
なぜかと言うと、これはわやQだけかもしれませんが、
「大人になった自分」からのメッセージに感じるから。

大人になると、色んなことが見えてきます。
「少年時代」には、確かに「地味な花」には気がつかなかった。
興味もなかった。
でも今では、山で健気に咲く、小さな高山植物に感動する。
道端に咲く、名もない花に心を打たれる。

だから、過去の自分に言えるわけです。
「地味な花に、目を向ける人も大勢いるよ」
「そんな花を、心から愛してくれる人がいるよ」


これは、私にとってそういう曲。
私たちの手に取ったフォーチュンクッキーの中には、
将来の自分からのメッセージが入っているんです。
きっと。
 



どうでしょう?
「この曲を聴くと涙が出る」と読んで、怪訝な顔をしたあなた。
一度、「恋する普通の少女」の気持ちに成りきり、聴いてみてください。
「あの頃の自分」に出会えるかもしれませんよ。




そして、最後にもう一度。
秋元康は、尊敬する作詞家なんです。




2015年12月5日 わやQ










AKB48 - 恋するフォーチュンクッキー







0と1の間 No.1 Singles
AKB48
キングレコード
2015-11-18